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僕が探偵になった理由

「どうして探偵になろうと思ったの?」

自分が探偵だと知った人間は、決まってこの質問をしてくる。

それなのに、既に何百回と質問されているであろうこの質問に対して、実のところ、未だに自分の中でしっくりくる回答ができていないのだ。
大体はふざけて「モテると思ったから」とはぐらかしている。

昨今、テレビドラマや小説、漫画にアニメと人気の「探偵」という職業。言葉の知名度や馴染みはあるものの、それ自体を仕事にしている人間は非常に稀有だ。当然の疑問だろうし、そう質問するのも無理はない。

1番最初にこの質問をしてきたのは、僕の恩師である。
それは10年前のあの日、探偵として雇ってもらえるかどうかの面接の時だ。

もうあまり覚えていないが、多分。「困っている人を助けたいからです」とか「普通の人生では味わえない体験がしたいからです」とか「浮気をするような人間に正義の鉄槌を食らわせたいからです」とか言っていたような気がする。確かにその理由も間違ってはいない。

「もうここで私と話している時点で、君は探偵になる運命だったんじゃないですかね?」

彼にそう言われて、僕は探偵になった。

思うに僕の探偵の原体験は小学生時代にある。
当時、クラスで友達の後藤君のお母さんを意味もなく尾行するという遊びが流行った。近所の友達と何人かでやって みんなは尾行がバレちゃってたけど、自分だけは最後まで気付かれなかった。色々と早かったんだな…
それにさっき小学校の卒業アルバムを引っ張り出してみたら、将来なりたいもの「焼きそば」って書いてあって震えた。大丈夫か俺。

今この文章を書いている最中にも、自問自答してみたが、やはりまだ明確な答えは出てこない。なんで未だに探偵を続けているんだろう?
ただ、どんなに辛い現場であっても、探偵を辞めたいと思った事は1度もなかった。そういった意味では、もう10年程やっているわけだし、向いてはいるんだとは思う。

あとやっぱモテたい。

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