月別アーカイブ: 2018年4月

探偵とは何か

探偵ときいてどんな人物を思い浮かべるだろう?

シャーロックホームズ、名探偵コナン、金田一少年あたりでしょうか。
(個人的には幽遊白書の霊界探偵リスペクト)

辞書で「探偵」を調べると

1 他人の行動・秘密などをひそかにさぐること。また、それを職業とする人。
2 敵の機密や内情をさぐること。また、その役目。スパイ。隠密 (おんみつ) 。密偵。

と出てきて、少し厨二病心をくすぐられる。

現代においての探偵とは、探偵社や興信所に所属する調査員の事を指すことが多い。2018年現在で探偵業の登録は、およそ6000弱あるが、実際に事業が成り立っている探偵社は極僅か。ちなみにその内の4000位が個人登録の探偵だ。

警察が殺人や刑事事件を担当するのに対して、探偵は民事事件の解決を仕事とする。日本の警察には「民事不介入」という原則があって、一般市民同士のいざこざには介入できない事になっている。そこで探偵の出番というわけだ。

探偵の歴史も説明しよう。

イギリスでは、1749年に「バウ街の警吏」と呼ばれるイギリス私服刑事が活躍したのが前身で、この刑事が1800年代に私立探偵となったのが探偵の始まりといわれている。

アメリカでは1841年、アメリカンシカゴ創立のダン・アンド・ブラッドストリート社が調査会社を設立。ちなみにアメリカの探偵は結構ヤバい。州にもよるが3段階の免許制度が定められていて、最上位の免許の取得には5年以上もかかるけれど、武器の所持が許される様な公的制度がある。ボディーガード的な位置づけで、強盗を防止する仕事とかもする、ピンカートン探偵社が有名。アメリカの探偵は高給取りなのです。

日本の探偵の歴史といえば、時は乱世、産業革命がひしめく明治時代。1889年(明治22年)に、日本橋の士族・光永百太が探偵社を設立したのが始まりといわれている。まぁここら辺諸説ありますけどね。

日本の場合も諸外国と同様に産業革命が起こったものの、比較的社会は安定していた為、積極的に情報価値を認める企業が少なかった。これにより、イギリスやアメリカとは違った形で日本の探偵は発展していく事になる。こうして浮気調査・婚前調査・興信調査などが主な業務となった訳だ。

探偵の法律

日本には探偵についての法律がある。その名も…

「探偵業の業務の適正化に関する法律」

ちょっとくどい。あとそのまんまやん。

正式名称が長いので、界隈の人間は「探偵業法」って呼んでます。この法律が平成18年に参議院で全会一致で可決、平成19年6月より施行。これによって探偵が「正当業務行為」として認められた。依頼を受けて張り込みや聴きこみや尾行や情報収集をして調査を行うこと、が合法的に行えるようになったのだ。
「正当業務行為」を簡単に説明すると、力士やボクサーやプロレスラーが試合中に相手に怪我をさせても、傷害罪には問われないじゃないですか、あれです。

しかし、ここで誤解して欲しくないのが、探偵業法はあくまで規制法の類になるということ。今回は、探偵業法の大事なとこだけ3つピックアップして紹介しよう。

第2条 【定義】
この法律において「探偵業務」とは他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞き込み、尾行、張り込みその他これらに類する方法により実施の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。

探偵業務を厳密に定義付けた内容です。
第2条2項以下は、文章が固いので僕の言葉で補足しますと

〇作家が著作の為に行う調査活動
〇フリージャーナリストや報道機関の取材活動
〇ネットメディアの発信、インフルエンサー同士の対談とか
〇学者、研究者の学術調査活動の一環で行う調査全般
〇弁護士、公認会計士、税理士、弁理士が受任した業務で必要な聴取活動
〇世論調査やアンケート調査
〇単に個人や法人の資産状況や経営戦略について調べること

これらは、ぱっと見 探偵に似た調査をしてるけど、実際は探偵業務とは違うよ って定義しています。わりと探偵とごっちゃになってるような人も多いと思う、特にジャーナリストとか。

第6条 【探偵業務の実施の原則】
探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者は探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。

ここは必ずテストにでます。探偵をする者が絶対に理解しておかなければいけないのがこの6条。「探偵だからって何か特別な権利がある訳ではないよ、あと人の平穏な生活の邪魔しちゃだめだよ」って事です。実は法律上の権利でいえば、探偵と民間人はほぼ一緒なのです。ジーザス。
あとどうでもいいけど「行うことができることとなるものではないこと」ってめっちゃ読むの難しくないですか?

第10条 【秘密の保持など】
探偵業者の業務に従事する者は、正当な理由がなく、その業務上知りえた人の秘密をもらしてはならない。探偵業者の業務に従事する者でなくなった後においても、同様とする。

探偵は口が堅くなければいけません。合法的に人の秘密を扱うわけだから、当然です。第10条2項には秘密が漏れるのを防止する措置を取れともあります。また、探偵を辞めても秘密保持の義務は継続されます、つまり墓まで持っていけという事です。
さてこの調子だと、小沢家の墓はとんでもなく秘密でいっぱいのお墓になりそうですね。もの好きな女性は、一緒に入りませんか?

まぁ探偵業法は第6条と第10条の為にあるようなものなので、これらを抑えておけばバッチリです。さあ、これで貴方も探偵の法律通。

過ごしやすい夜

今僕は山梨のとある旅館でこの文章を書いている。

私的な旅行ではない。浮気調査をしてる。

小学生くらいの頃だろうか。毎年、夏休みになると家族旅行で山梨に行っていた。車でいくのだが、夏休みの渋滞ラッシュを避けて、夜になってから家を出発する。

その時、日常である東京から離れていく中で感じるドキドキやワクワク。

「変性意識状態」「トランス状態」「非日常への扉」「ハレ」とでも言うのか。

家族みんなで小さな車に乗り込むと、カーステレオからは親父の趣味のアメリカンオールディーズや70年代ポップスが流れてくる。その曲に合わせて、夜の高速道路をビュンビュン走り抜ける。最初の数十分はワクワクが止まらずに、夜の風景を眺めているのだが、次第に車に揺られながら寝てしまう。

どれだけ時間が経ったかわからないが、車が止まり目が覚める。目的地に着いたかと思えば、まだそこはサービスエリアだ。寝ぼけながらも車から降りて、無数に並んだ自動販売機でジュースを買ってもらったりする。それを飲みながら夜空を見上げると、無数の小さな星が見えて心が躍った。

たくさんの長いトンネルを抜けて、目的地に着く頃には深夜になり、街灯もない車のヘッドライトだけが頼りの山道に。宿に着くと、親から旅行中の暇な時間用に買ってくれた本を与えられ、虫の声をききながら眠くなるまで本を読んでいた。

その頃の記憶や感覚が、なんとなく蘇ってきている。
過ごしやすい夜だから。

探偵ってのは、みんなが思っているよりも、大胆に尾行したりする。

実をいうと今だって、対象者(ターゲット)のすぐ隣の部屋に宿泊しているし、さっきは温泉で対象者と出くわして、ちょっとのあいだ一緒に露天風呂にも入った。

対象者は、まさか自分が監視されているとは思っていない。僕の見た目だって、どこにでもいそうな普通の男だし、探偵だとは夢にも思わないだろう。

探偵とはそういうものだ。

対象者の部屋の灯りが消えている。今頃不倫相手と不貞でもしてるのだろうか。

明日は朝食を食べてから、お昼くらいには山梨の観光地へとかに向かうような流れだろう。対象者の車には最新のGPSがついているので、追跡もらくちんだ。慣れてしまえばただの旅行である。行き先は知らせてくれないけど。

またいつか家族旅行がしたい。