私の不倫を撮ってください


『32歳の女です、小沢さんに依頼がしたくてDMしました。私は現在ダブル不倫をしてるんですが、不倫相手と私が仲良くホテルに入っていくシーンを、不倫相手に気づかれないように撮ってくれませんか?』

なんじゃそりゃ?笑

すかさず「え、そんな証拠を撮って一体何に使うんですか?」と尋ねたところ、不倫相手と別れる為に使いたいそうな。

なんでも依頼者さん自身はもう関係を解消したいと思ってるのに、不倫相手の男が別れてくれないらしい。で、その不倫相手の男も なんかちょっとヤバイ奴で、別れようみたいな雰囲気を出すと「そんなの嫌だ!俺がこんなに君を好きなのにどうして別れたいんだ!不倫は共犯だ!俺を裏切るな!絶対バレないから大丈夫だ!」とか言うタイプの奴らしいんですよね。なかなか穏便に別れられなそうだから、外部的な理由が欲しいんですって。

つまり、不倫の証拠を僕が撮って、依頼者さんにそれを渡して。あたかもその証拠が【依頼者さんの旦那さんが探偵に依頼して手に入れた証拠】のようにみせかけて、不倫相手の男に証拠写真をチラ見させると。そんでもって「私はあなたとの関係を続けていきたかったけど、旦那に証拠を撮られてバレてしまった…でも旦那は、私がもう今後あなたに会わないなら、あなたにも慰謝料請求はしないで穏便にしてやるって言われたの…だからお願い…私と別れて(泣)」みたいな交渉をしたいんだそうです。

面白いでしょ?w
探偵には、こういう依頼も来たりするんです。

私立探偵のいいところは、依頼者を選べることだ。

僕が依頼を受けるか受けないかを決める判断基準としては、いかに依頼者さんに感情移入できるかどうかが普段は重要になってくるんだけど、それとは別に、内容が面白い依頼だったりすると、全然儲からなくても受けてしまうことが多い。(仕事選べよ)

じゃあいいですよ、ってんで。不倫相手との密会場所である、都内某シティホテルで依頼者さんとアポを取った。不倫が行われる当日にね。

フロントで挨拶してから、まず依頼者さんがホテルにチェックインして、そのまま一緒に部屋について行った。高層階の眺めの良いオシャレな部屋だった。その中で、探偵の重要事項説明をして契約書にサインを貰う。次第になんだか変な気持ちになってくる。密室で人妻と2人っきりで、自分はいったい何をやってるんだとw

そしてつい言ってしまった「依頼者さん、あれですよね?この後、不倫相手と一緒にこの部屋に来て…あのベットの上で…その…行われるわけですよね…?」

「はい、そうです…これが最後の情事になると思います///」
頬を赤らめながら言う依頼者(人妻)

なんて色っぽいんだ。僕は勃起した。

で、それから部屋の外に出て、このあとの動きについて
「不倫相手とはこの店の前で待ち合わせをします」

とか

「ここから手をつなぎながら、この角度でホテルに入ってきます」

とか

「エレベーター降りて、このタイミングでいきなりキスをします」

みたいな感じで、良い映像が撮れるように、事前に打ち合わせを行った。普段僕らがやってる浮気調査では有り得ないことだ。まさに勝利を約束された試合。完全な出来レースである。

台本の打ち合わせが終わると「じゃあ、あとはよろしくお願いします」と言われ、不倫相手と待ち合わせする依頼者さんを遠くから張り込んだ。

それからはまぁ、台本通りに動く依頼者さんと不倫相手を、もうこれでもかっていう位にベストなアングルから舐めるように不貞の映像を撮りましたよね。もはや探偵というよりかは、AV監督にでもなった気分だった。

そう、不倫カップルの前戯というのはホテルに入る前から既に始まっているのだ。

言うまでもなく、言い逃れのできないような不貞の映像がバッチリ撮れた。もとい、作品が完成した。それを依頼者さんに提出。その後、2週間くらい経ってからから「小沢さんありがとうございます!無事、穏便に別れることができました!」という連絡を頂いた。いやーよかったよかった。

探偵は不倫をしてる人にとっては天敵のような存在だが、時としてこんな風に不倫をしてる人の味方になることもあるのだ。