探偵の聞き込み

先日こんな依頼があった。

「ある一軒家の購入を検討しているんですが、隣に相当変わった人が住んでいるという噂が立ってるんです。不動産屋からは、その変人のせいで物件の値段を少し下げていると聞きました。隣の家の人物の調査をお願いできますか?」

珍しく浮気調査ではない依頼。尾行や張り込みではなく、いわゆる聞き込みがメインとなる調査だ。やりましょう。何を隠そう、小沢は聞き込み調査も得意なのだ。

聞き込み調査は役作りが大事だ。まず聞き出したい情報から逆算して、それを知ろうとするのに自然な人物像と設定を設けて、そう見られるような服装や風貌で調査に臨むのだ。もちろん、あくまで探偵ということは伏せなくてはいけない。

今回の調査では「趣味は映画鑑賞で大学の専攻は文化人類学、温和な性格で妹想いだけど、ちょっと不器用な兄」という疑似人格でいこう。ちなみに ここまで細かく人格設定する必要はまるでない。好きな映画監督はデヴィッド・フィンチャーです。

早朝に現場へ到着。
家の前には…

あ、ヤバい。

ヤバいヤバい。
既にこの家ヤバいぞw

石の並べ方に只ならぬにこだわりが感じられるし、水道修理のステッカー集めすぎ。
っていうかなんだよ魂って。笑

気を引き締めて聞き込みを開始。探偵が近隣住民の聞き込みをしていく際には、原則調査対象の居住先から離れた家の住人から聞き込みを始めて、順番に少しづつ調査対象者の家に近い住人へと聞き込んでいくのがセオリーだ。

探偵の聞き込みのテクニックは色々あるのだが、今回は最強の聞き込みのチートアイテムを紹介しようと思う。

それは…

Amazonギフト(500円)である。

選ばれし者のみが手にすることのできる この神聖なるホーリーカード。

聞き込みをする際に、このAmazonギフト券の封筒をわざと手にたくさん持って、おもむろにチラつかせるのだ。こいつなんか配ってんじゃね?感を醸し出すことによって、まずは会話を成立させる。業界でいうところの【Amazon券オープナー】だ。すかさず「あ、これつまらないものですが…お話のお礼に受け取ってください」と手渡すと、あーら不思議。知りたい情報がぽんぽん出てくる。

そう。

人はみな、Amazonギフト券の前には無力なのだ。

風の前の塵に同じ。
動かざること山の如し。
オレ オマエ マルカジリ。

主婦とか本当にすごいですよ、火曜サスペンス劇場の登場人物みたいにペラペラしゃべってくれるからマジで捗ります。

中にはこういうのを受け取らない方もいるんですけど、そういう人って「謝礼とか受け取らないで親切に話をしてあげている自分」ってのに陶酔しちゃってることが多いので、逆に断ってからの方が 気分が良くなって饒舌になるんです。

ちなみにコンビニとかで買えるAmazonギフト券は最低金額は1000円からなんですけど、このAmazonのサイトだと500円ギフト券が唯一買える。しかも一枚一枚が個別に包装されているので見栄えも良いからサッと渡しやすい。5000円で小刻みに10枚配れるって結構便利なんですよね、わりと経費の節約になります。おいそこ、セコイって言うな。探偵はこういう細かい積み重ねで事件を解決に導いていくのだよワトソン君。

ギフト券を巧みに捌いた小沢は、見事に対象者の情報をゲット。毎日定時になるとヤバい音楽が家から爆音で聞こえてきたり、奇声を上げながらお札を道にばら撒いたり、週1ペースで家の前にパトカーが止まってたり、鍵が開いてると近所の家の中に勝手に上がり込んじゃうとか、まぁ無事にヤベー奴ということが判明致しました。(聞き込み前からわかってたけど)

最後に、その対象者が1時間かけて庭の石の配置をいじっている映像を撮影してから調査終了。依頼者さんに報告書を提出しながら説明をした。

「いくら安いからって、そんな人の隣には住めないなぁ…迷ってたけど、これでこの物件を諦める踏ん切りがつきました。一生の買い物と比べたら とても安い出費でした、どうもありがとうございました」との事。

  

とんでもない。
こちらも結構楽しませて頂きましたから。
♰ 魂