子供の連れ去り

子供の連れ去り

この文字を見ると「頭のおかしな男性の不審者による誘拐犯行」といったイメージを連想する人も多いだろう。しかし昨今の日本社会の裏側で深刻な問題になっている子供の連れ去りとは、なんと片親の独断による実子の連れ去りなのだ。

これはどういう事かというと、親権争いの最中で不利になっている側の親や、離婚をした後に子供との面会ができない側の親や、離婚をしたいが子供とは離れたくない親などが、勝手に子供を連れ去ると、どういう訳か現在の日本の法律では連れ去りが実質的に容認され、むしろ“先に連れ去った者勝ち”の状態になってしまうのである。

この文明社会の日本においてそんな馬鹿な話があるか、と僕も最初は疑った。だが事実なのだ。

何故そんな事態になるかというと、日本では連れ去った側の親が有利な法律しか存在しないせいだ。ほぼ全ての先進国では子供を連れ去ると誘拐や児童虐待で刑事罰が科されるのだが、日本では刑法でも誘拐罪などで摘発できるものの、連れ去りは家庭内の問題とみなされてしまい、事実上はほとんど適用されない。また、継続性の原則(特別な事情が無い限りは子供が育ってきた環境を継続させるべきだという考え方)も相まって、連れ去られてから時間が経てば経つほど既成事実が出来上がって連れ戻しが難しくなってしまうのだ。ここでさらに虚偽のDV被害届まで出されてしまうと、うかつに子供に近づく事も出来なくなる。近年のDV防止法の風潮に後押しされ、警察はDVの被害届が出されるとロクな調査もせずに直ぐに受理する他ない為に質が悪い。勝手に連れ去るのは法律上は問題ないが、それを連れ返すと誘拐罪になるのが日本という国なのだ。最近ではガイアックスの社長が、子供を連れ去った妻の実家の住居侵入罪で逮捕されたのが記憶に新しいだろう。日本の法曹界は本当に腐っている、日本の闇の一部である。

探偵の立場から共同親権について述べさせてもらうと、実はわりとちょくちょく探偵の元には「不倫をした妻が子供を連れ去ってしまい困っている」という相談が来る。これはどういうことかというと、不倫がバレて問い詰められた奥さんが自分の立場が危うくなる前にある日突然子供を連れて別居を始めるパワープレイが(この入れ知恵をする悪徳弁護士を殴らせろ)、単独親権の民法ではある種容認されているということである。

実をいうと僕は今、子供を連れ去られてしまった旦那さんの 子供の奪還に協力をしている。匿名性を守る上で詳しい話はここには書けないが、旦那さんは子供との会話の内容を、泣きながら僕に話してくれた。その時の彼の顔が忘れられない。

厳しい状況ではあるが、僕も探偵としてのノウハウをフルに活用して、有利な証拠や情報を集めて真っ向から戦う覚悟だ。先日の調査で、光は見えてきた。

絶対に笑ってはいけない名探偵

テレビドラマなどでよく見るように、依頼者は探偵のもとへと調査の相談にやってくる。その日の依頼者は、見るからに優しそうな40代の中年男性だった。どこにでもいるような平凡なサラリーマンの方だ。深いため息をついた後に、こう言った。

「…妻が浮気をしているのが発覚しました…」

相談室に入ってきてからずっと小刻みに震えている。動揺している様子が見て取れた。顔色も悪く、よく見ると目の下にクマが見えた。よほど奥さんの浮気がショックだったのだろう。いたたまれない。

探偵のもとにやってくる依頼者は多種多様だ。

有利な離婚の為に、明確な依頼の意思を持ってやってくる人。自身が置かれた状況に混乱して、助けを求めにくる人。単に探偵への興味があるだけの、ひやかしの様な人。依頼をするかどうかを迷み、背中を押してくれるのを待っている人。

そして、今回の依頼者の様な人…

「そうなんですね。それはお気の毒です」

「はい…夫婦生活20年、私は妻や子供達を何よりも大事にしてきました。ずっと家族の為に一生懸命働いてきて…それなのに…こんなの…酷すぎます!!」

「奥さんが浮気してるのは、間違いないんですよね?」

「ええ…間違いないです…見てしまいましたから…」

「何か決定的な証拠を見たんですか?写真とか、LINEのやり取りだとか」

「はい、見ました。スマホに浮気相手の写真がたくさん入ってました…」

「なるほど。相手はどんな人だったんですか?」

「それがですね…実は私も知っている人物なんです…」

「なんと。共通のお知り合いだったんですか?」

「はい。妻は東方神起と付き合ってるんです」

????????????????????

は?

「…今、東方神起と付き合ってるとおっしゃいました??」

「はい。東方神起と付き合ってます」

「えっと、東方神起と付き合ってるんですか??」

「はい。東方神起と付き合ってます」

「東方神起と付き合ってるんで…す…ね??」

「はい。妻は東方神起と付き合ってます」

こいつヤベー奴だ!!!!!笑

そう言う彼の口調には一片の迷いもなく、真剣そのものだった。
【妻は東方神起と付き合ってます】というかなりのパワーワードを既に連呼しているにもかかわらず、彼の気迫はとどまる事を知らない。完全にキテる。いやもう難なら、東の方より神が降りてきている感すらあった。

「ちょっと待ってくださいよ、たしか東方神起ってグループ名じゃないですか?」

「じゃあヨンウンジェジュンです」

「よ、よんよじゅじぇん…?」

「ヨンウンジェジュンです」

「え、あ、ヨンウンジェジュン…ですか?メンバーの名前ですかね?その人が浮気相手?」

「そう。ヨンウンジェジュンです」

僕の横でカウンセラーである同僚の女の子が、軽く俯きながら笑いを堪えてプルプル震えている。つられて笑ってしまうのを必死に堪える。あぶない。ここでアウトになるわけにはいかない。っていうか今「じゃあ」って言ったよなこの人?「じゃあ」って何だよまじで。笑

「…なので妻を尾行して、浮気の証拠を掴んでくださぃ!!お願いしまあぁす!!」

声が若干裏返っている。やばい、やばすぎる…!!

だが僕もプロだ。なんとか笑いを噛み殺す。

「…状況はわかりまし…た…。ですが、調査をご依頼されるのは、もう少しよく考えてからにしませんか?」

「絶対に絶対に浮気してます!お金なら出しますからお願いします!」

「いやいやいやいや。ここはひとつ冷静になってですね…」

事件性が無いにも関わらず、ここまで明確に依頼者が調査を頼んできているのに、それをこっちが断ろうとするケースもなかなかないぞ?だって絶対あり得ないもん。調査無駄になっちゃうもん。あと奥さんにも悪いし。しかし僕が気を使って何度か再考を促すも、彼は鋼の意思を曲げようとしなかった。そして叫ぶのだ。

「私はもう妻を奪った東方神起が憎いんですよぉ!!だから調査をおお!!」

この人ちょっと泣いてる。しかもカウンセラーの子なんてもう横向いて完全に笑っちゃってるし。アウトだろまじで。っていうか東方神起が憎いの?グループ単位?ヨンウンジェジュンどこいった?笑

「わかりました!わかりましたよ!調査します!だから一旦このティッシュで顔ふきましょ…!」

こうして、とりあえず一日だけということで浮気調査を受けることになった。この調査の指示書には「浮気相手:ヨンウンジェジュン(東方神起)」と記載されており、とんでもない異彩を放っていた。風格のあるこの案件は、調査員の間でも一目置かれていた事は言うまでもあるまい。

後日、その案件の調査日。
僕自身は調査に参加せずに、部下に尾行を任せていた。夜の10時ごろ、その部下から電話が入る。

「どうだった?ヨンウンジェジュン現れた?」

「いやぁー現れずですねー、新大久保で主婦友達とみんなでサムギョプサル食べて帰宅っす」

「ですよね。調査お疲れ様でした。気を付けて帰ってね」

僕の心のどこかでは、ヨンウンジェジュンの登場を望んでいたのかもしれない。

ディズニーランドの浮気や不倫

それなりに長く探偵をしてきた僕が、ディズニーランドやディズニシーに抱く印象といえば「夢と魔法の世界」ではなく…

「浮気と不倫の世界」だ。

カップルや家族連れで賑わうディズニー。僕ら探偵はみんなが思っている以上に、実は仕事でディズニーリゾートへ行く事が多い。いわゆるディズニー不倫(浮気)デートの調査である。

みんな大好きホテルミラコスタやアンバサダーホテル、ランドホテルもお泊り不倫ディズニーの宿泊先になっているのである。夢も希望もあったもんじゃない。

ディズニーランドの公式ホテルは、いわゆるラブホテルではない。そういったホテルでの宿泊を不貞の証拠として立証するには、客室から出てくるところとチェックインとチェックアウトをフロントで行っている一連の流れを映像で納める必要があるのだ。

ここだけの話、探偵からするとディズニーのホテルは少し厄介だ。まずキャストのホスピタリティが高すぎるが故に、探偵としての動きがホテル側に警戒されるまでの時間が極端に短い。そして何より構造が一般的なホテルと大きく異なり、出入り口やホテルの利用ルールが複雑な上、ディズニーランドやディズニーシーと関連した要素まで存在する。これらの理由から、手ごわい現場となりやすい。

しかし、何を隠そう小沢は
ディズニーがめちゃくちゃ好き なのである。

「小沢君、ディズニーが現場なんだけど、助けてくれない?」という連絡が探偵仲間から入ってくるくらいだ。そしてディズニー案件で失敗した事は今まで一度もない。成功率100%、それがディズニー探偵小沢だ。

なんかディズニーって文字をたくさん打ってたら、ディズニー行きたくなってきたから、僕がいかにディズニストなのかを少し語らせてくれ。

まず「あたしディズニー好きなんですよぉ~」とか言ってるそこらへんの女子より、確実に僕の方がディズニーが好きだ。そういう子とディズニーデートに行くと、僕のハシャギっぷりにまずドン引きする。 僕は基本的にインパするとマリーちゃんの耳をつける、これは基本中の基本だ。あまりに似合いすぎているせいで「小沢さんもうそれ本当に耳生えているみたいですよ!」と各方面から絶賛の嵐である。【お家に帰るまでがディズニーです】という自論に則り、電車で耳をつけたまま帰宅した事だってある。マリーちゃんの耳をつけてメディテレーニアンハーバーを背に ブラックペッパー味のポップコーンを頬張る俺の後ろ姿とか最高。

一番好きなアトラクションは「カリブの海賊」。過去に1日だけで最高12回連続で乗った事がある。カリブの海賊が好きな人に悪い人はいないって、じっちゃん(探偵ではない)も言ってましたし。 デイヴィ・ジョーンズの霧を潜ってから バルボッサが登場してパイレーツの「The Medallion Calls」のBGMが流れてくる下りとか泣きゲロ吐いちゃう。序盤のブルーバイユーの横を通り過ぎていくあたりの雰囲気とかもマジでヤバい、左側の小屋に住みたいと本気で考えていた時期がありました。あまりにも好きすぎるもんで「カリブの海賊」のあの独特の水場の空気感や においみたいなものを、自宅でも堪能できないものかと思って、小さなスポイトを持って行って 船の下の水を数滴採取して持って帰った。自分の部屋で「カリブの海賊」のウォークスルーBGMを流しながら部屋を真っ暗にしつつ、その水のにおいを嗅ぐと、もうそこは僕だけのカリブ海。「やい、オメエたち…」からのセリフはもちろん完コピだ。脳内アトラクションにシングルライダーしまくっていた。それでは飽き足らず、その持ち帰ったカリブのにおいのする液体を水で薄めて、外出する時に香水として自分に振りかけていた時期まである。個人的には大好きな香りだったので(小沢ブランド:カリブブルーオム)わりと気に入ってつけていたのだが、ある日、友人の西沢君に「オイなんかさっきからここらへんプールの塩素のくさい臭いしないか?」と言われてからは自重する様になった。ちょっとショックだった。

ショーパレを観たら泣く。もう泣く。感動で涙がこぼれるとかいうレベルではなく、少し嗚咽がする位に泣くのだ。 マーメイドラグーンシアターなんて行くと、自分の向いの前方の人たちとか何なら僕見て引いてるし。BBBなんて観たあかつきには ミキ様のステップの前で、僕の涙腺はもはや無力なのである。セーフティバーは私が上げよう。

ディズニ―は音楽も素敵だ。対象者を尾行する時に「魔法にかけられて」のサントラをBGMにすることもあるし、車両移動中は「俺クトリカルパレード・ドリームライツ」だ。毎年開催されるディズニ―オンクラシックだって、恒例行事でずっと参加している。感動できるディズニー映画の話題になると「どこで泣いた?」とか聞いてくる人がいるが、そりゃもう決まってんだろうが。1番冒頭の「星に願いを」の曲と共に水上のシンデレラ城に花火が上がる映像が流れてる時点でもう既に泣いてんだよこっちは!

あと分かる人しか分からないだろうけど僕はクラブ33のメンバーでした。

ところで何の話をしてたんだっけ?

探偵の職務質問

職務質問。それは国家権力。

職務質問。それは国民的エンカウント。

おそらく普通の人が経験するであろう、一生分の職務質問を僕は既に受けている。いや、そんなもんじゃない、ゆうに100回は超えている。それは僕の見た目が怪しいとかそういう理由では決してない。そこ、不審者っぽいとか言うな。

張り込みをしていると場合によっては長時間同じ場所にとどまることになる。すると不審に思って警察に通報する人がいる。見慣れない男が数時間も同じ場所に居たら、そりゃ今のご時世そう思うのは至極当然だ。

張り込み現場は「周辺の警戒度」というものが存在する。これは対象者を追っている時に抱かれる探偵に対しての警戒度とは異なり、近隣住民による不審者に対しての警戒度を指す。もうさんざん経験しているせいか、警察に通報されたであろう瞬間というのは、なんとなくわかる。

 

警察「こんばんわー」

小沢「こんばんわ」(挨拶しながら免許証を差し出す)

警察「あ、もしかしてお仕事?」

小沢「そうなんですよ。やっぱ通報入っちゃいましたかね?」

警察「うん。だってお兄さんもう4時間くらいずっといるでしょ?」

小沢「ええ。ちょっと手こずってまして…」

警察「どこの宅を張ってんの?」

小沢「それは言えませんね」

警察「だよね」

小沢「どこの家から通報入りましたか?」

警察「それは言えないね」

小沢「ですよね」

警察「まぁ、上手いこと言っておくよ、あんま目立たないようにね」

小沢「はーい、ありがとうございます」

 

優しい警察の方だと大体はこんな感じのやり取りだ。エリアにもよるが警察の知り合いも結構増えた。「小沢くん、また君か」という様な、名探偵コナンや金田一少年の事件簿でよく警察の人間が言う様な台詞を実際に言われることもしばしばあるのだ。

とはいえ、探偵にとっては通報されるのはあまり喜ばしい事ではない。警察官の人間性にもよるが、やり取りをしている時はかなり目立ってしまうし、場合によっては移動を余儀なくされ、張り込み場所が潰されることもあるからだ。その為、通報はできるだけ避けなければならない。

小沢独自の通報防止テクニックは色々あるのだが、一番得意としているのは【ミーちゃんファインダー】である。やり方は簡単、まずは挨拶だ。張り込み現場周辺が民家であればピンポンを押すし、家の出入りで人を見かければ躊躇なく声をかける。そして名刺を渡すのだ。もちろん本物の探偵の名刺ではない、偽の名刺だ。そこにはこう書かれてある。

 

大手ペットショップ特約店 ペット探し本舗

 

そう、僕はペットを探してる業者なのだ。そして写真を見せながら「この猫を見かけませんでしたか?」と聞く。見かけるはずがない、だって長野の祖母の家の猫だし。それでまたこいつが可愛いんだわ。(ミーちゃん)

こういったテクニックを使って、安全な張り込み環境を確保するのも探偵の腕の見せ所なのである。意外と近所のおばあちゃんとかとも仲良くなったりできるからおすすめだ。

 

しかしよくよく考えてみると探偵になる以前も、僕は職務質問を受ける事が多かった。

道端を歩いていて、警官を見かけたら、目が合った瞬間に一瞬だけ「あ!やべ!」的な表情をして、さりげなくUターンをしながら軽く逃げようとすると、わりと高確率で「ちょっと君」と呼び止められて職務質問をされる。でも別に何もないわけで、その警官をニヤリと嘲笑いながら立ち去るという高尚な遊びを行っていたせいだ。ってかこの話書く必要あったか?